2008年02月10日

読書ノート「東大で教えた社会人学」 この記事をはてなブックマークに登録

ちょっと読書の感想を書いておこうと思ったので、
日記にします。

今回読んでいるのは、
「東大で教えた社会人学[人生の設計篇]」
(文芸春秋 草間俊介、畑村洋太郎著)です。


まだ読み終わってないんですが、とりあえず途中までの感想を。


これは東京大学工学部での「産業総論」という講義を本にしたもので、
各項目ごとに畑村洋太郎氏がコメントの文章を添える形で構成されています。

講義を直接見たわけではありませんが、
書籍では畑村氏のコメントがあったり、文章としての体裁が
しっかりしているのではずれはないです。
なかには雑談に価値のある講義もあるのでしょうけど、
書くものは一流でも話すのが下手だったりする人もいるので(笑)


立花隆さんとかは自著の冒頭で授業よりも書籍の方が明らかに
優れていると言っています。(データ的にも充実しているとか。)


著者によると、工学部の学生があまりにも専門分化された技術論
ばかりを扱い、「産業や技術の全体像を立体的にとらえる視点」(pp.6)
が抜けているため、産業界において産業の方向性などを考える
広い視野を持つ人材がいないという懸念があったようです。

そのため、技術者の中にもジェネラルな視点を持った人材を生み出すという
考えがこの講座にはあります。
端的に言うと「社長になれる技術者」を作りたかったということだそう。

社長などの経営者となるためにはマネジメント能力や、会社の組織について
精通している必要があり、技術者として勤め続けていても身につかないこれらの
能力を意識的に磨かなければならないですからね。


ということで、この本はこれから工学部を出て技術者として企業に勤務する
人を対象としています。

しかしそれは別に彼らだけに限られたことではなく、普通に働いていく過程で
経験することでもあります。これから生きていく時代について考えたり、
会社をどう選ぶのか、人生設計はどうするのか、老後はどうか等々。

そもそも働くというのはただ企業に勤めるだけでなく、
社会、時代の状況に大きく影響を受けるものです。

高度経済成長期であればただ前を向いて互いに励ましあって働いていれば、
給与は上がっていったし、終身雇用でリストラの不安もありませんでした。
(団塊世代ですね)


しかし今はどの産業が伸びているのか、あるいはどれが斜陽産業なのかを
考えたり、働く上でいかに自分の市場価値をいかに高めていくのか、
キャリア設計はどうするのかなどを考えなければいけません。


もし考えなければ結果は一目瞭然です。
企業と一緒に共倒れになったり、自らの市場価値を高めていかなかったがために
職にあふれたり、非正規雇用に甘んじたりして、社会的に言えば下層へと落ちる
ことになります。

政府が、国がどうにかしてくれるというのは幻想です。
年金制度は崩壊しつつあり、社会保障などのセーフティネットは十分に
機能していません。

怖い話かもしれませんが、現にそういう危機感を持ってしっかりと
将来のことを考えて今から準備していかないといけないと思います。



感想に戻ると、
本書は六章立てになっていて、僕が読んだのは1〜3章までです。

一章では、日本の今の時代における状況や今後について議論がなされます。
財政赤字が進み、借金が一千兆円を超えたことや、
(本書の時にはまだ超えていませんでしたが今は超えています)
少子高齢化で労働人口が減ることによる年金制度の崩壊、あるいは
労働力の質の低下が言われています。


人材育成は従来、企業で行われてきました。
しかし、「今やその構図は崩れ、効率重視の企業は人材育成に手間をかけるよりも
容易に即戦力を求めるようになった。」(pp.28)と指摘されるように、
キャリアデベロップメントをしっかりと行える機会が減り、
一方で特定のスキルなどを持たないフリーターが増えてしまっているのです。


なんかどこかの雑誌か何かで、即戦力となる社員を募集!みたいな
のが新卒社員募集のフレーズとしてあったんですが、そういう風に学生に
まで即戦力の波が迫ってきているというのも少し驚きです。
もしもしっかり将来を見据えるなら、十分にスキルを磨くことが出来る
職場を選ぶのが懸命でしょう。


労働人口の低下に対する問題に関連して移民を受け入れるという議論が
ありますが、僕はそれよりもまずは日本で非正規社員として働いている人々や
ニートなどの労働者予備軍をしっかりと教育してスキルを高め、
働けるようにする方が先だと思います。


フリーターはどうしていつまでもフリーターかというと、
やっぱり責任の有る仕事は回されないわけです。単純な作業が多くなるし、
しかもその技術というのは汎用性が無くて他の業種に活かせなかったりする。
そういう人材はいくらでもいるわけですから、
フリーターに高い給料を払えるはずもありません。


面白かったのが、
技術のブラックボックス化という話です。

今現在日本の技術は世界水準的にもトップにあるわけですが、
中国やインドなどが追い上げてきており、例えば中国が日本の技術を盗むという
ようなことが実際にあるわけです。
(というより模倣といった方が語弊が少ないかもしれません。)

しかし日本が世界に誇れるものは高度な技術力や高生産性であるので、
それが流出しないように守ることが非常に大切です。

そこで出てくるのが技術流出を防ぐ「技術のブラックボックス化」というもので、
見せない、しゃべらない、触らせないという新三猿のことを言うそうです。
(三猿は日光にありますよね。見ざる、聞かざる、言わざる。)


面白かったのが最後の触らせないと言う部分。

「触らせないことは一番重要だ。頭の切れる開発者は技術を見ただけで、ある程度のシステムが理解できる。でも、実は本当の意味で理解できるのは、技術に直接手を触れて、肌合いや温度や振動などの感触を実感したときだ。」(pp.49)

これはびっくりしました。



また、大企業と中小企業のどちらに勤めるのかという話があり、
そのメリットやデメリットを挙げられています。以下に挙げてみます。

<メリット>


大企業:安定感、給与水準、福利厚生、労働環境などの待遇
    システムとして完成しているので様々な知識や経験が身につく

中小企業:成長余力がある、様々な挑戦の出来る場がある、成長の醍醐味を感じられる


<デメリット>

大企業:成熟期から衰退期へと移る企業が多い(*1)、保守的

中小企業:社長の手腕に大きく左右される(*2)、不安定


*1:企業の繁栄期間は約三〇年という有名な説があるそうです。
*2:社長の器以上に会社は大きくならないと言ってるのは驚きです。



就職活動をするときには
実際にこういうことをしっかり考えることが必要になりますよね。
わざわざ斜陽産業に入るというのはそれなりに覚悟が要ることです。


実力成果主義の導入の弊害についてもかなりコンパクトに
書かれていたのでいくつかポイントを。


やはり年功序列的な賃金システムを維持できず、
成果主義を導入したというところが多いようです。

つまり給与総額はそのままにして、ある人は上がり、
ある人は下がるというゼロサムゲームだと。


そして問題として評価制度が確立していないことが挙げられます。
短期で見るか長期で見るかによっても違いますし(多くは短期評価のようですが)
評価者がまだ未熟だという指摘もあるようです。


と言う感じで残りも読んだら感想を書きたいと思います。
読んでて思ったのは、こういうことってあまり学校でもやらないし、
意外と知らないことが多いなということですね。
お金に学ぶという続編の方は先に読んだんですが、
こちらも面白かったです。


posted by Jack at 01:04 | Comment(0) | TrackBack(0) | 批評〜書籍・映画・ドラマ〜 | このエントリーを含むはてなブックマーク |

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